7月1日 午前4時20分 其の弐 

「あのさ…。今日の部活っていうの…あれ、嘘なんだよ。」

「嘘…。嘘…?何で嘘をついたの?」

「それを今から話すんだよ…。聞いてくれ。頼む。」

そうだ今からその理由を話すためにここに来たんだ。今
更何もいわずには帰れない…。

「今月の『祭』は7月だから7月7日。つまり6日後だ
というのは分かるよな?」

「うん。それは教えてもらったね。」

「結論から言うとお前は…6日後殺される予定の人物な
んだ…。」

言ってしまった。もはや後戻りは出来ない。後はここか
らどうやって俺の味方につけるかが問題となる。失敗な
どは許されない。絶対遂行が絶対条件。

そんなことを考えながら葵の顔を見ると困惑したような
驚いたようなきょとんとした、そんな顔だった。だがち
らりと納得したような顔が見えた。やはり分かっていた
のか…?

「やっぱり…余所者のわたしからかぁ…。そうだよね。
それで?つまり?」

急に口調が問い詰めるような形に変わった。ここで臆せ
ば失敗に繋がる。それだけは避けたかった。巧みにこち
ら側に引き込むように誘導をしなければならない。

「今日の放課後は部活のミーティングなどしていなかっ
た。なぜなら俺たちは『祭』最終決定を今日の放課後、
教室でしていたんだ。」

「…………」

暫く無言が続いたような気がした。これは俺が肩の荷を
降ろせたことから来る錯覚か?だが、そんなことは関係
ない。口やら喉がからからになってきていた。お茶は遠
慮するべきではなかった。

「……この村では裏切り者は殺される。なら何故俺がこ
のことをお前に話したか分かるか?」

「あなたのまわりには味方がいない。」

即答だ。理解力があってくれて助かった。それにこいつ
にはこの村には存在しない何かがある。しかしこうも言
いあてたのに彼女の表情は少しも緩まなかった。

「分かってくれるか…?俺は…この村を…」

「―――――――。」

「え?」

「別にいいよわたしは。」

そんなに身構えてするような話でもなかったのか?どう
してこうも簡単に。確かに結果的にこの状態に持ち込ま
せる自身はあった。手段、いや手段を絞っても手など何
通りもの方法がある。勿論かなり緊張はしていた。だが
それを踏まえてもだ。…まぁ自発的にこの状態に持ち込
んでくれた事に越したことはない。

「あ…ありがとう…。でも何で…そんな簡単に?」

「だってこんな体験一生に一度くらいしかないんじゃな
いかなぁと思って」

彼女はにたりと笑って言った。

あまりにもあっさりと、俺の任務は終わった。不思議に
思えるくらいに。



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