昨日は考えることが多すぎてろくに寝付くことが出来な
かった。恐らく『祭』の事よりも俺が寝付けなかった理
由は葵によるものが多いだろう。
彼女とは昨日初めて出会いそして彼女の本章を垣間見た
ような気がした。いや、あれが本性かどうかもわからな
い。というよりどれを本当の自分としていようとしてい
るのかが分からない所に気味の悪さを覚えた。
そして楓。今までの彼女からは想像すらできなかったあ
の、静かで不気味な彼女。
二人に会うのに妙な壁が出来てしまったような気がする。
恐らくそれは俺にしか見えていないだろう。つまりはそ
んなものなのだ。気にとめることも無い。
そうだ。そんなことを考えて昨日は一夜を過ごしたんだ。
全く・・・こういうときにこそ眠りが必要だというのに、
これからの対応策の考えをまとめなければこの村全体の
「祭」には到底立ち向かえない。
昨日楓は葵から全部聞いたといった。つまり三人の間で
は既に繋がりがあると考えても良いことになる。どうせ
クラス中のやつらはまず味方につけるつもりだった。手
間が省けたと考えていいだろう。
こんなことをぼうっと考えながら朝の支度を済ませ家を
出ようとするとチャイムが鳴った。昨日のような恐怖心
やら何やらはない。
ドアを開けるとそこには葵が居た。考えてみればこうす
る方が合理的かもしれない。適当に朝の挨拶を交わし家
に出ることを告げると俺は長い通学路に向かっていった。