おぼろげだが遠くに学校が見えてきた。さっきまでは昨
日のことにはお互い一切触れず、他愛もない話をしてい
たがここで葵が切り出した。
「ねぇ。昨日楓ちゃんから聞いた?」
「あぁ、ああなったから昨日はあいつだからよかったも
のの口が軽すぎやしないか?もう少し慎重になるべきだ。」
「やっぱりそう思う?でも彼女、熱心だったから。かな
り。」
葵は熱心。そう思ったのか。しかしやはりこの事の本質
を捉えている。何かしらの楓の異変を感じ取ったのだろ
う。今までであったことも無いのにだ。そんな彼女への
感心さを心の中でしみじみと感じていると葵がそれに釘
を刺すように―――、
「で、何か考えはあるの?具体的な」
ぴしゃりと、冷たいというよりは厳しく彼女は言った。
正直耳が痛い。
「んと…一人ずつ…地道だがそれで味方を増やしていこ
うと思う。それなら上手くいけば同じ事を繰り返してい
く事によってどんどん人数が増えていくはずだ…」
「ふぅん…」
どうやら彼女には不服なようだった。だがそれ以外には
あまりいい方法が見つからなかった。昨日楓はああ言っ
ていたものの、やはり人を信じることは中々難しいもの
だ。
恐らくこれ以外に方法は存在しないだろう。もし大衆の
前で考えもなしにこの考えを晒せばたちまち俺は村から
必要のない存在にされてしまう。
そうだ。今日から始まる。この囲まれた村を潰す日が。