7月2日 午前8時00分 

おぼろげだが遠くに学校が見えてきた。さっきまでは昨
日のことにはお互い一切触れず、他愛もない話をしてい
たがここで葵が切り出した。

「ねぇ。昨日楓ちゃんから聞いた?」

「あぁ、ああなったから昨日はあいつだからよかったも
のの口が軽すぎやしないか?もう少し慎重になるべきだ。」

「やっぱりそう思う?でも彼女、熱心だったから。かな
り。」

葵は熱心。そう思ったのか。しかしやはりこの事の本質
を捉えている。何かしらの楓の異変を感じ取ったのだろ
う。今までであったことも無いのにだ。そんな彼女への
感心さを心の中でしみじみと感じていると葵がそれに釘
を刺すように―――、

「で、何か考えはあるの?具体的な」

ぴしゃりと、冷たいというよりは厳しく彼女は言った。
正直耳が痛い。

「んと…一人ずつ…地道だがそれで味方を増やしていこ
うと思う。それなら上手くいけば同じ事を繰り返してい
く事によってどんどん人数が増えていくはずだ…」

「ふぅん…」

どうやら彼女には不服なようだった。だがそれ以外には
あまりいい方法が見つからなかった。昨日楓はああ言っ
ていたものの、やはり人を信じることは中々難しいもの
だ。

恐らくこれ以外に方法は存在しないだろう。もし大衆の
前で考えもなしにこの考えを晒せばたちまち俺は村から
必要のない存在にされてしまう。

そうだ。今日から始まる。この囲まれた村を潰す日が。



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