7月2日 午前8時30分 

教室の時計を見てみるともう教師が教室にやってきても
いい時間帯だった。理由は不明。だから既にこの教室に
いた楓と一先ず話すことにした。これからの対応を考え
なければならない。

「紅…!」

楓が近づいて来た俺に反応し思わずか、声を上げる。

しかし、もはや昨日のような空気で話せなくなっている
ことに、俺は妙な虚しさを覚えた。

「あ…。ん…」

俺も返事を返そうとするも、なんと言えばいいのか全く
多い浮かばず、マヌケな声だけが口から漏れた。

思えば俺たちが話そうとしていることは、こんな場所で
話題に出来るようなものでもないので、会話を紡ぐこと
も出来なかった。

すると、学校特有の引き戸を開ける音がした。古くから
ある家では引き戸など珍しくもないがこう意識して聞く
こともまた、なかった。

昨日あったことを知っているのは三人だけのはず。だか
らこの重く圧し掛かってくる空気は、自分の気のせいだ
と思い込むようにした。でなければ本当に潰されてしま
いそうだった。

ここまでのものとは思いもしなかった。もしこのまま味
方が増えていけばどうなるのか、プレッシャーが増える
のか、それとも頼りになる仲間が増えて心の支えが出来
るのか。

今この場、この時に考えることではなかった。だが必要
であった。しかしもう考えたくない。このままならやめ
てしまいたいとさえ思うようになってしまう。俺は朝の
形式的な挨拶を終えると思考を止めに入った。



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