教室の時計を見てみるともう教師が教室にやってきても
いい時間帯だった。理由は不明。だから既にこの教室に
いた楓と一先ず話すことにした。これからの対応を考え
なければならない。
「紅…!」
楓が近づいて来た俺に反応し思わずか、声を上げる。
しかし、もはや昨日のような空気で話せなくなっている
ことに、俺は妙な虚しさを覚えた。
「あ…。ん…」
俺も返事を返そうとするも、なんと言えばいいのか全く
多い浮かばず、マヌケな声だけが口から漏れた。
思えば俺たちが話そうとしていることは、こんな場所で
話題に出来るようなものでもないので、会話を紡ぐこと
も出来なかった。
すると、学校特有の引き戸を開ける音がした。古くから
ある家では引き戸など珍しくもないがこう意識して聞く
こともまた、なかった。
昨日あったことを知っているのは三人だけのはず。だか
らこの重く圧し掛かってくる空気は、自分の気のせいだ
と思い込むようにした。でなければ本当に潰されてしま
いそうだった。
ここまでのものとは思いもしなかった。もしこのまま味
方が増えていけばどうなるのか、プレッシャーが増える
のか、それとも頼りになる仲間が増えて心の支えが出来
るのか。
今この場、この時に考えることではなかった。だが必要
であった。しかしもう考えたくない。このままならやめ
てしまいたいとさえ思うようになってしまう。俺は朝の
形式的な挨拶を終えると思考を止めに入った。