ふと、普段とは異なる雰囲気を感じて俺は目を覚ました。
辺りを見回すと皆机やら椅子を運んだりしていた。それ
を見ると、妙にざわついているのも分かる。
その異様な光景に俺は少し混乱する。寝起きのせいで状
況把握が難しいのかもしれない。
しばらくは眠気で考えが回らなかったものの嗅覚だけは
ちゃんと機能していたようで、すぐに昼の時間帯だとい
うことが分かった。これでなかなか、嗅覚というものは
役に立つ。
そういえばそうだ、さっき眠りについたときは、既に十
一時半かそこらだったような気がしていた。ならばすぐ
に納得がいく。
ぼうっと座ってこんなことを考えていると俺の名前が呼
ばれたような気がした。どうやらそれは空耳ではなかっ
たらしく、もう一度俺の名前は呼ばれた。
「――――紅!」
楓だったか。俺はすぐに立ち上がって、彼女等のいる机
に向かう。楓は少しでも遅れると文句を言う。先程の口
調もそんな感じだった。しかし、椅子は足りなかったの
ですぐ近くにある空いた席から拝借した。
だがいざ、席につくと妙な違和感があった。いつもと違
って、葵と楓とで昼食を取るからというわけでもない。
もっと根本的な何か…。
「あんた何やってんの!?弁当持ってこなきゃ何も食べ
れないでしょーが!」
あ、そうだった。確かにこれでは何も出来ない。葵はく
すくすと笑っている。俺は顔が少し紅潮していくのがよ
くわかった。