7月4日 午後3時30分 

 いつの間にやら放課後だ。学校内では特に何の進展も
ない。それならそれでも構わないか。既に三人にまで対
象を絞り込めているのだから。

 しかし、やはりここからが難しい所だ。精神的にも俺
のあらゆる技術的にも。どうやって確信を得る情報を手
に入れようか。この際、三人にまで分かっていることを
話して出方を見てみるか? いや、仮にも味方が二人は
存在しているのだ。流石に良心が咎めるだろうな。

 こんな事を考えてる間にも生徒も帰り始め、このまま
ぼうっとしていれば昨日みたい一人きりの状態にされて
しまいそうだ。今日はどうしようか。何もしない時間を
過ごしているたびに、段々と俺の不安感は募っていく。
理由はいくつもあれど、何かしらの行動が必要だ。

 そうだな、人を殺すにはどんな陳腐なものでも計画性
が必要だ。そうならば、まずどこでそれを行うかが重要
だろう。

 だが、「祭」のルールは大体知っているが、実際に
「祭」で殺しを行う際の手順はあまり知らない。俺が知
っているとすれば……、そう。今月ならば七月七日の翌
日、八日に入った時、つまりその日の零時に対象者の命
を奪うことぐらいだ。どうしてこんな儀式的なのかは知
らないが、きっと俺も知らないこの村の伝統的なものな
のかもしれない。葵ならば俺の知らない事も知っている
だろうか。

 知識を頼らない手はない。持ちかけてみよう。葵はま
だ帰ってないはず。他の生徒はいるが、元々探すのには
苦にならない程度の数だ。すぐに見つかる――。

 ざわざわと騒がしい教室。この程度の人数でも、流石
に動き回れていると辛いな。あてが外れたことに少し苛
立つ。

 辺りを見回し葵を探す。だが――、

 いないな。いない。それどころか信司も楓もいない。
皆して帰るのが早すぎないか? くそ。他の場所をわざ
わざ探しにいくのもしんどい。だがルールが分からなけ
れば場所も選べない。昨日みたいな展開なら楽なのだろ
うがそんなこともあるまい。まず帰路につこう。



 外に出てみたもののまだ、暑いという感じでもないな。
七月の気温はまだ好きになれるが、八月にもなればそん
なことも言っていられない。ただ、俺が生きていればの
話だが。

 そんなことどうでもいいのだ。葵はもう家に帰ってい
るのだろうか。帰っているのなら、俺が家につく頃には
葵も既に家でくつろいでいる頃だろう。そうと決まれば
足を急がなければならない。

 「祭」はすぐそこまで近づいてきているのだから。



入り口へ
4時間10分前へ
30分後へ